
夫・翔太と子ども、3人で暮らす結衣。翔太のやりっぱなし、出しっぱなし、突然想定外の行動を取る……などの行動に悩まされていた。そしてある日、「夫はADHDではないか?」という疑念を抱くようになる。そしてADHDについて調べるうちに、発達障害のあるパートナーと生活する中で孤独感や絶望感、無力感に襲われる状態を「カサンドラ症候群」と呼ぶことを知る。しかし、そこまでわかっても解決策は見いだせず、絶望する結衣。そこに「ADHD謎解き探偵団」を名乗るブルドッグと女性が現れて……。
『もしかして、うちの夫はADHD? ~夫の見てる世界を体験したら、すれ違いが減りました~』(はなゆい/オーバーラップ)は、“夫の見てる世界”を通じて、夫婦の間に生じるすれ違いをどう捉え直していくかを描いた作品だ。ADHDの人、そしてそのパートナーからも支持を集める本作は、どのようにして生まれたのか。ADHDグレーである著者・はなゆいさんに話を聞いた。
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――本作について、読者の方からはどのような感想が届いていますか?
はなゆいさん(以下、はなゆい):本当にたくさんの感想をいただいています。特に多かったのは、「うちのことかと思いました」という声でした。「なんでこんなに話が通じないんだろうと思っていた」「悪気がないって、こういうことだったのかもしれない」「自分だけが苦しいと思っていた」と長年言葉にできなかった感覚が腑に落ちたと書いてくださる方がとても多かったんです。「今まで説明しても伝わらなかったけれど、漫画だとイメージできた」という声もあって。私は知識として説明するのではなく、疑似体験として伝えたいと思って描いていたので、そう受け取っていただけたのはとても嬉しかったですね。
個人的に印象に残ったのは、ADHD傾向のある方から「“なんで普通にできないの?”と言われ続けてきたので、こういうふうに感覚を説明してもらえて救われた」という声をいただいたことです。夫婦で読んだとおっしゃってくださる方もいました。私はこの作品で、夫婦の「見えている世界の違い」を描こうとしてきました。だからこそカサンドラ側の苦しさも、ADHD側の苦しさも、「どちらもあるよね」と感じてもらえたことが本当にありがたかったです。
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――本作を描く中で難しかったことは何ですか?
はなゆい:「リアルに描くこと」と、「誰かを傷つけすぎないこと」のバランスでした。実際、パートナー側がかなり疲弊しているケースは本当にあるんです。なので綺麗事だけ描くと、「現実はそんなに甘くない」と感じる方もいると思いました。一方で“困った行動”ばかりを強調すると「ADHDの人=迷惑な人」という印象にもなりかねない。そのバランスがすごく難しかったです。
もうひとつ、説明しすぎないこともかなり意識していました。そのためには専門用語をそのまま説明するより、「それが生活の中でどう起きるか」を描こうと。洗濯や外出、子どもの送迎などどこの家庭にもありそうな場面に落とし込むことで、「知識」ではなく「体感」として伝わるよう工夫しました。
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――特に印象に残っているシーンはどこですか?
はなゆい:最後のシーンですね。この作品を描いている間、私はずっと「この夫婦はどうなったら幸せなんだろう」と考えていました。もちろん診断を受けたり、特性を理解したりすることで楽になる部分はあります。でも、「病院に行ったら全部解決して、めでたしめでたし」ではないんです。実際にお話を伺った方も、悩みや苦労を抱えながら、それでも「一緒にいる」という選択をしている方が多くいらっしゃいました。でもその気持ちの中には「なんで私ばっかりこんなに大変なんだろう」という気持ちもやはりあると思うんです。
私自身、子育てをする中で「母親側の負担が大きすぎない?」と夫に腹が立ったことがありました。そこで「どんな状態になったら納得できるんだろう」とずっと考えていたんです。そこでたどり着いたのが、「苦労したからこそ、見える景色もあるのかもしれない」という考え方でした。苦労したからこそ出会える人がいる。理解できる気持ちがある。価値観が広がる。もちろん、苦労なんてしないに越したことはありません。それでも、その経験をした人にしか見えない世界も確かにあるのではないかと。最後のシーンには、そういう気持ちを込めていました。
ちなみに夫がそのシーンを読んで、「ちょっと泣いた」と言っていたんです。それを聞いたときに、「このラストでよかったんだな」と思いました。
取材・文=原智香
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