
『なでるだけのお仕事です!』(あんまりひどい/主婦と生活社)は、3万年後の未来に復活した女性が、「なでる」力で世界を救うことになる異色のポストアポカリプスファンタジーである。
主人公・望流木(もちるぎ)かいなは、仕事で疲れ切った帰宅途中にスマホのミサイル警報に驚き、ヘドロの溜まった池に落下しそのまま命を落としてしまう。しかし3万年後、かいなは「ヒル族」と呼ばれるもふもふした生物たちによって復元される。彼らは敵対する「マ族」に対抗するため、絶滅した「凶悪な人類」の力を借りようと、かいなを兵器として再生させたのだ。突然の状況に戸惑うかいなだったが、あまりにも愛らしい姿のヒル族を思わずなでてしまう。すると、その「なでなで」には想像だにしない力が秘められていたのである――。
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そんな終末世界、というか人類が滅亡している世界を舞台にしながら、徹底して「かわいい」と「癒やし」を貫いている点が本作の最大の魅力だろう。設定だけを聞けば重苦しい物語を想像してしまうが、作品の中心にいるのは警戒心よりも愛らしさが勝ってしまうヒル族たちだ。彼らのふわふわとしたデフォルメした猫のような見た目と純粋な性格がかわいくて、読んでいると自然に頬が緩んでいるはずだ。
一方で、「なでる」という何気ない行為に世界を左右する力を持たせた発想がぶっ飛んでいて面白い。武器や兵器を使って戦い、傷つけるのではなく、相手を「なでる」ことで問題を解決していく展開はとても独創的だ。人類はそもそも同種族での争いから滅んだはず、というヒル族とマ族による人類の評価には皮肉が利いているため、つい笑ってしまう。
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物語が進むにつれてヒル族とマ族の関係、そして人類が滅亡した世界の謎も少しずつ明らかになっていく。そのため、かわいいだけの作品ではなく、序盤で見せるゆる〜い空気の裏側にはしっかりとした世界観も用意されているのだ。かわいい絵柄に癒やされながら、その後の展開に目が離せなくなる作品だ。
文=時任邪武郎
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