
忘れられない一杯がある。たった一度食べただけなのに、香りも味も、そのときの驚きまでもが心に焼きついて離れない。『異世界ラーメン屋台 エルフの食通は「ラメン」が食べたい』(黒八:漫画、森月真冬:原作、転:キャラクター原案/主婦と生活社)は、謎の料理「ラメン」に魅せられたエルフを描く異世界グルメファンタジーだ。
主人公・リンスィールは、エルフ界一の食通を自称している。食に対して並々ならぬこだわりを持つ彼女は、ある日、城下町・ファーレンハイトの路地裏に現れる奇妙な男の噂を耳にする。その男は不思議な車を引きながら笛の音とともに現れ、見たこともない料理をふるまうらしい。その料理の名は「ラメン」。未知の味と美食を求めるリンスィールが、その噂を聞いて黙っていられるはずがなかった。
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そして彼女はついに「ラメン」と出会う。心地よい歯ごたえの麺とそれに絡む奥深い味わいの熱々スープ、長時間煮込まれた柔らかなチャーシュー。その世界では場違いなラーメン屋台から出された一杯のすべてが衝撃的で、一瞬で心をつかまれてしまうのだった。すっかり「ラメン」の虜となったリンスィールは、夜な夜な現れる屋台を待ちわびるようになる。
しかし、ある夜を境に、そのラーメン屋台は現れなくなる。それから20年。自らも「ラメン」を作っていたが、やはりあの男の「ラメン」を味わいたくてリンスィールは同じ街角に立ち続けていた。そんなある日、聞き覚えのある笛の音が聞こえ、見覚えのある屋台が姿を現す。しかし――。
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カタコトでしか話せないラーメン屋台の男の正体と、なぜリンスィールたちの前に出現したのかが気になるところだが、物語が進むにつれて明かされていくだろう。こんなストーリーに加えて、並々ならぬラーメンへの愛情がこれでもかと詰め込まれているので、深夜に読むときは強烈な「麺テロ」を覚悟してほしい。
文=坪谷佳保
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