
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
『いまどきの死体 法医学者が見た幸せな死に方』(西尾元:原作、あさひゆり:漫画/KADOKAWA)は、法医学の現場を通して、現代人の生と死を見つめるコミックエッセイだ。不審死や変死、孤独死など、死因がはっきりしない遺体が運び込まれる解剖室。そこでは、亡くなった人が最後に何を経験したのかを、体に残された痕跡から読み解いていく。
本作に登場する西田法医解剖医のもとには、死因が特定できないさまざまな状態の遺体が届く。遺体から読み取れるどんなに些細な情報も拾い上げ、死因を明確にする。そしてその結果から、生前に抱えていた事情などが見えてくるのである。扱われるテーマは重いが、医学用語がわかりやすく説明されており、法医学に詳しくなくても読み進めやすい。
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印象的なのは、推しのコンサートのために大阪から東京へ向かった女性のエピソードだ。高速バスで上京しホテルに宿泊した翌朝、彼女はチェックアウトの時間になっても姿を見せず、室内で亡くなっているのが見つかる。解剖の結果、死因は「肺動脈血栓塞栓症」、いわゆるエコノミークラス症候群と判明する。長時間同じ姿勢でいることや脱水によって血栓ができ、命に関わる事態につながったのだ。楽しいはずの遠征先で突然命を落としたこの女性のエピソードは決して他人事ではない。
老々介護をめぐる話も胸に刺さる。認知症の妻を介護していた夫が、追い詰められた末に妻を手にかけ、自分も命を絶ってしまうのだが、解剖によって妻の脳にはがんの病巣がいくつもできていたことがわかる。認知症と思っていた症状は、実はがんが原因だった可能性があったのだ。もし病気の正体がわかっていたら違う結果になっていたかもしれない……。そう思わずにはいられない。
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法医学の知られざる世界を解説しているだけでなく、死因から見えてくる人々の人生にも目を向けている本作。遺体が残した最期のメッセージは、今生きている私たちに忘れてはならないことを教えてくれる。
文=坪谷佳保
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