
※本記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
『暴力病院 看護助手が精神科で見たもの』(水谷緑:著、村上純一:監修/竹書房)は、精神科専門医の村上純一氏の監修のもと、精神科病院で働く看護助手の視点から壮絶な現場の様子を描いたコミックエッセイだ。
舞台となるのは、他の病院では受け入れを断られた患者たちが流れ着く精神科病院。そこでは行動管理や生活保護費の管理、閉鎖的な人間関係などが日常的に存在している。看護助手たちは全力で患者に向き合い寄り添うのだが、同時に厳しい対応をせざるを得なくなるのもまた「業務の延長」となっていた。
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本作は「暴力は悪」と単純に断罪する作品ではない。もちろん暴力は絶対に許されない。しかし描かれている現場は、人手不足、長期入院、依存症、症状の重い患者への対応といった極限状態が続いており、そんななかでは患者ひとりひとりの自由よりも「事故を起こさないこと」が優先されていくのだ。「支援」が少しずつ「管理」へと変わっていってしまう境界線を真正面から描いているのである。
また、精神疾患を持つ人々に対する社会全体の偏見に切り込んでいる点も印象的だ。作中、精神科の患者たちが、一般社会からだけでなく時には医療者側からも差別的な目で見られる様子も描かれる。閉鎖病棟という私たちの目に触れることのない空間で起きている「社会が精神疾患とどう向き合ってきたか」という構造的な問題を浮かび上がらせている。
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読んでいてとても胸が苦しくなる場面があるが、その苦しさから目をそらしてはいけないだろう。支援と支配、保護と隔離、優しさと暴力という、ときに地続きになってしまう現実と、精神科医療を単純に善と悪という判断軸で語ることのできない難しさを漫画という形で表現した、非常に重く、そしてとても考えさせられる作品である。
文=ハサン
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