
好きな人とずっと一緒にいたいと願うのは当然なことだが、もし実現できたとき、仕事や生活、将来への不安などにより想像していたものとは違っていて思いが変わることもあるだろう。『はなまる・エントロピー』(みぞグミ絵璃/幻冬舎コミックス)は、そんな「好きだけではどうにもならない苦しさ」を、ファンタジーな設定を通して繊細に描いた作品だ。
主人公の千穂は仕事が大好きな女性。一方のナツは、千穂のことが大好きな草食系男子だ。ふたりは同じ身長156cmで、気の合う恋人同士として穏やかな日々を過ごしていたが、次第に千穂は、ナツといることに息苦しさを覚えるようになる。優しくて、自分を大切にしてくれる相手なのになぜか窮屈に感じてしまう。その感情に戸惑いながら「このままでは一緒にいられないかもしれない」と悩んでいた。そんなある日、突然ナツの身長が13.5cmになってしまう。
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この設定だけを見るとかわいらしいラブコメだ。実際、小さくなったナツを巡る生活には思わず笑ってしまう場面も多い。ポケットに入ってしまうほど小さな体で一生懸命に生活する姿は愛らしく、絵柄のやわらかさも相まって独特の癒やしがある。
だが、物理的に小さくなったナツは、これまで以上に千穂の助けなしでは生きていけなくなるため、千穂の中にあった「支える側」の負担や葛藤が少しずつ浮かび上がっていくのだ。恋人だから優しくしたい。しかし自分の人生も大切にしたい。そのどちらも本音だから苦しい。本作は、恋愛にある「きれいごとでは済まない感情」をまっすぐに突きつける。
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恋愛漫画でありながら、描いているのは、誰かと一緒に生きることの難しさだ。大切なパートナーに互いの生活が一変するほどの何かが起きたらあなたはどうするか、という問いを投げかけてくる。ただ好きというだけでは立ち行かない、そんな状況を経験したことがある人ほど、本作に強く心を動かされるはずだ。
文=ゆくり
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