
老いた親との旅には、ひとり旅や友人との旅とはまた違った尊さがある。『小鳥をつれて旅にでる』(赤夏/主婦の友社)は、その価値をしみじみと感じさせてくれるコミックエッセイだ。
著者の赤夏さんは年に複数回も国内外をひとり旅する、旅のプロ。本作で描かれているのは、人生初となった母との長期旅行の様子だ。
赤夏さんの母親は何十年もの間、夫のモラハラに耐え、“家庭”という鳥かごの中で暮らしてきた女性。だからこそ、著者は母親が楽しめそうな旅を全力で考え、決行した。
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私という子どもがいなければ、お母さんはもっと早く離婚という手段を選べたのではないか…。そんな気持ちを抱えながらの親子旅は、ただほっこりするだけでなく、親と子の絆を考えさせられもする。赤夏さんは、どのような思いで本作を制作し、母との長期旅行で何を思ったのか。話を伺った。
――本作では、お母さまが受けてきたお父さまからのモラハラも描かれていました。ご実家で暮らされていた頃は、赤夏さんもお父さまのモラハラを受けていたのでしょうか?
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赤夏さん(以下、赤夏):受けていました。私や弟たちも、何時間も続く説教を受ける対象でした。
精神医療を必要としていたのは間違いなく父ですが、結果的に父以外の家族全員がモラハラで精神を病むことになってしまいました。
――説教が何時間も…。それはすごく辛いですね。
赤夏:黒板を引っかく音を大音響で聴き続けるような不快感をご想像ください…。幸い、直接的な暴力は少なかったのですが、本作で描いたように、どんなことで父の怒りを買うか分からない地雷原のような家庭だったので、食事中や睡眠中も、心が休まりませんでした。
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――そうした経験を作品に描くことも、なかなかしんどかったですよね…。
赤夏:本作では、父をキャラクターではなく「現象」として描いています。キャラとして人物造型に焦点を当てると、主軸が家父長制や精神病理、自己愛性人格障害の話題にスライドしてしまい、母との旅行という軸にブレが生じてしまうので…。
――お父さまのモラハラからお母さまを助けたいと思われたことも多々あったのでしょうか。
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赤夏:母が家を飛び出したときには、無事に逃げられるようにと祈りながら、自分の通帳と印鑑を、こっそり母のカバンに入れたことがあります。後に、母から返されましたけどね…。
取材・文=古川諭香
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