
少子高齢化社会の今、家族の介護は決して他人事ではない。しかし実際に介護が始まらないと、どんな生活が待っているのかを想像するのは難しいだろう。『殿さまとわたし』(ぬまじりよしみ/双葉社)は、父親の介護をすることになった著者・ぬまじりよしみ氏が、その経験をフィクション化した作品である。
主人公・史子にはまるで「殿さま」のような父がいる。彼は定年退職後、ほとんどの時間を家で過ごしているが、家事をしないばかりか自分の思い通りにならないと不機嫌になり、暴言を吐くなどして周囲を振り回す生活を送っていた。そんな父の世話に疲れ果てた母は体調を崩して史子の姉の家に居候することに。史子には弟もいるが姉と弟どちらも遠方に住んでいるため、実家から徒歩5分圏内に住む史子は、父の世話をひとりで担うことになり、そしてそれが介護という形に変わっていくのだ。
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この状況を見るとかなり重い物語に感じるかもしれない。実際本作には介護する側の疲労やストレス、苦しみが赤裸々に描かれ、老々介護や少子高齢化、介護離職といった現代社会が抱える問題を浮き彫りにしている。
だが、わがまま放題でどこか憎みきれない父に振り回されながらも、なんだかんだ言って放っておけない娘の姿がユーモアたっぷりに描かれているので、笑いとともに読み進めることができるのが本作の魅力だ。そして、かつては強かった父が少しずつ変わっていくという「親が年を取ること」という現実にもまっすぐに目を向けているため、読み手は史子に感情移入してページをめくるはずだ。
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介護なんてまだ先の話と思っている人にも「その時」は必ずやってくる。本作はその時に家族とどう向き合っていくべきかを考え、本人と話し合うきっかけにもなるのではないだろうか。
なお2026年5月14日発売の3巻でこの物語は完結となる。「殿さま」と史子の奮闘の日々がどんな結末にたどり着くのか、ぜひ手にとって見届けてほしい。
文=ゆくり
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