
『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話』(清水めりぃ/KADOKAWA)は、過酷な労働環境に心身を削られていた人々が、ある日突然「猫になる」ことで人生を取り戻していく異色のコミックエッセイだ。ブラック企業、長時間労働、自己犠牲という現代社会の重いテーマを扱いながらも、本作に満ちているのは怒りや絶望ではなく、やさしい笑いとぬくもりだ。シリーズ累計発行部数20万部を超える人気作である。
シリーズは、14時間勤務が当たり前、体調不良でも出社を強いられる職場で働くモフ田くんが、朝起きたら猫になっていたことから始まった。普通なら大混乱のはずなのに、猫の姿で会社に現れた彼をきっかけに殺伐としていた職場は少しずつ変化していく。人間同士だと日常茶飯事になっていた理不尽なことや、思いやりに欠ける行動が「猫社員」がいることによって徐々に変わっていくのだ。
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また、巻を重ねるごとに登場人物(猫)が増えていくのも本シリーズの面白さだ。天職を見つけたスコさん、夢を叶えたハチ谷くん、家族との絆を取り戻したトラ雄さん、理想の飼い主と出会ったくろべぇ。それぞれの「猫生」には、それぞれの幸せのかたちがある。
そして第8巻『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話8 猫兄弟の場合』では、シリーズ初となる兄弟猫・白壱と灰二が登場。働き方も性格も正反対のふたりが地域猫として人々と関わりながら、それぞれのやり方で誰かの支えになっていく。噛み合わないようでいて絶妙に息の合った兄弟の姿はこれまで以上ににぎやかで愛おしい。家族だからこその距離と絆が大きな見どころだ。
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仕事に追われ自分を後回しにしてきた人々が、猫になったことで初めて休み方を知り、甘え方を知り、誰かに頼ることを覚えていく。社会人として「ちゃんとしなければ」という気持ちを背負い込みすぎている人ほどこの物語が心に響くはずだ。
文=Y・イノウエ
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