
家族とは、決して血縁関係だけで成立するものではない。赤の他人であろうが、一緒にいることで互いが幸福を感じられるならば、それもれっきとした家族なのだろう。2026年4月24日に第1巻が発売された『にせもの家族』(田澤裕/スクウェア・エニックス)は、タイトルだけを見るとサスペンス的な危うい物語を想像するかもしれないが、そんな緊張感はほぼ感じられないヒューマンドラマである。
主人公・清は大好きだった母親が急死したことで仕事である小説も書くことができず失意の日々を送っていた。そんなある日、家にいることができずにあてもなく電車に乗り、適当に降りた駅の町を歩いていると、通りかかった家で女性が庭いじりをしている姿が目に入る。生きていれば母親と同じくらいの年齢かと考えていると、突然その女性が倒れたために、清はあわてて助けに庭に入る。するとその女性から彼女の息子に間違われてしまうのだった。
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人違いと言っても女性は全く聞く耳を持たず強引に清を家に招き入れ、さらにちょうど小学校から帰宅した女性の孫・玲愛に不審者と疑われ通報されそうになったため、やむを得ず清は、女性の息子として、玲愛の伯父として振る舞うことになる。ちなみに本当の息子の名は「拓郎」で13年間音信不通らしく、玲愛は拓郎との面識はなかったのだ。
かくして3人で夕飯を済ませ、拓郎の部屋に入った清がこの家から逃げ出す算段をしていると、拓郎の妹=玲愛の母親が仕事から帰宅。もはや身バレまったなしの状況で恐る恐る部屋の中から扉越しに聞き耳を立てていると、玲愛と話す母親の口から驚くべき言葉が発せられるのだった――。
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その言葉を聞いたことで清は拓郎として振る舞い続けることになるのだが、その理由はぜひ本書を手にとって確かめてほしい。なお冒頭にも述べたように本作に誰かが誰かを陥れるような人物は一切登場しない。そこにあるのは家族が互いを思い合う温かさだ。読後はきっと、家族との時間をもっと大切にしたくなっているはずだ。
文=nobuo
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