
『オタ婚のススメ!』(砂履シンシャ/KADOKAWA)は、それぞれの自由なオタク活動を守るために「交際0日で偽装結婚」した男女が、同居生活をするなかで本当の夫婦になっていく姿を描いたラブコメディ。推し活、同人活動、創作、家族の結婚プレッシャーなど、現代のオタクが持ちがちな悩みを取り上げた、わかりみの深い作品だ。
主人公は、プロ漫画家を目指す東雲涼太と、会社員をしながら同人活動に励む小田明美。恋愛に割く時間も余裕もないふたりがある縁談で出会い、家族からの結婚プレッシャーをかわしつつ自由なオタクライフを守るという利害の一致だけで結婚を決意する。感情より合理性を優先したスタートだったはずが、一緒に暮らし、互いの価値観を知るうちに、その関係は少しずつ変化していく。
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第4巻では、その関係がさらに一歩前へ進む。互いの「キャラ属性」や「設定」を深掘りしたり、「涼太の実家に行く」という大きなイベントを乗り越えたりと、偽装夫婦とは思えないほど自然に「夫婦らしさ」を育んでいく様子が描かれる。さらに「ベタなイベントを体験しよう」と訪れた夏の海では、思わぬ展開となって――。
若さゆえの勢いではなく、趣味も仕事も生活も大切にしたいふたりだから、距離の詰め方が慎重で、相手への思いやりも現実的だ。ただときめくだけではない、大人の恋愛が描かれているところが多くの共感を呼ぶのだろう。そして創作者だからこその悩み、推しへの情熱、属性トークなど、刺さる人には刺さるオタクネタが随所にちりばめられているのもポイントだ。もちろん、オタク界隈に詳しくなくても、誰かの好きなものを尊重し合う温かさは十分に伝わるはずだ。
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結婚は恋愛の延長線上にあるものだけではない。理解し合い、居心地のよさを積み重ねた先に生まれる結婚もある。好きなものを手放さずに誰かと生きる幸せを教えてくれる作品である。
文=富野安彦
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