※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年6月号からの転載です。

心に傷を負った鳴滝琉と、家族のためにある罪を抱えるヨハン。東京、ソウル、ベルリンの3都市を舞台に、ふたりの10年の物語を描いたドラマ『ソウルメイト』がNetflixで配信されている。主演の磯村さん、テギョンさんに本作に込めた思いについて語っていただいた。
磯村:『ソウルメイト』では、琉とヨハン、ふたりの人物の10年間を描いています。出会いからラストに向けての心の機微を、橋爪監督がとても丁寧に脚本に落とし込んでいて。もし自分が演じたら、琉という人物をどう作っていけるだろうという好奇心が湧きました。
テギョン:僕の場合、オファーをいただいても、台本が面白くなかったら途中で読むのをやめてしまうんです。でも、この作品に関しては、静かな感情を呼び起こすストーリーにもかかわらず、次のエピソードが気になって読むのが止められなかった。とにかく面白かったので、ぜひヨハンを演じたいと思いました。
続きを読む
磯村:琉とヨハンの関係性は、ひと言では表せなくて。“ソウルメイト”と言っていますが、自分にはそういう存在がいないですし、劇中でわかりやすく説明されるわけでもなくて。家族とも友人とも違うふたりの関係性をどう作っていくか。ふたりはどんな道を歩んできたのか。台本に書かれていない部分でふたりの心はどう動いていたのか。心の内側にフォーカスしたキャラクターを演じるのは、僕としても初めての経験でした。
テギョン:僕も撮影を通じて、初めての感情を味わいました。ヨハンは、社会的には弱者と言われる立場で、困難の多い人生を送っています。しかも、どんどんよくない状況に陥ってしまう。こうした中、「ヨハンだったらどう感じるだろう」「こんなにつらい状況になった時、もし自分にソウルメイトがいたらどう思うだろう」と初めての気持ちを想像しながら撮影に挑みました。
続きを読む
マジックアワーのような美しいストーリー
――おふたりが顔を合わせたのは、どんなタイミングでしたか? 初対面の印象は?
磯村:クランクインの2週間前に、カメラテストというものがあり、その際にテギョンさんと初めてお会いしました。僕は2PM世代なので、受験勉強をしながらよく音楽を聴いていました。まさかテギョンさんとご一緒できるなんて思ってもみなかったですし、お会いした時には「あ、本物だ!」って。カメラテストの時からふたりのシーンを作れたような気がしましたし、同じような空気感を持っている方だなと思いました。
テギョン:僕もそう思いました。「なんて繊細なお芝居をされる方なんだ」と思いましたし、演技に安定感がある。人柄も落ち着いていて、素敵な役者さんとご一緒できてうれしく思いましたし、撮影を通じてその気持ちはどんどん大きくなっていきました。心の拠りどころになる、頼れる共演者でしたね。
続きを読む
磯村:ですが、演技の話はあまりしなかった気がします。撮影をしていく中でお互いがお互いに興味を持っていきましたし、僕も「今テギョンさんはどういう状態かな」「どう思ってるかな」と撮影以外の時間でも常に意識していました。言葉にせずともお互いを気にかけ合いながら、ふたりの関係を築き上げていった気がします。
テギョン:ヨハンにとって、琉はただいるだけで心が救われるような存在です。そういうソウルメイトがいることで感じられる何かを、言葉ではない形で表現しようと思いました。
磯村:お互いの心が震える瞬間を、空気で感じ合っていた気がします。ヨハンと琉は別れと再会を繰り返しますが、韓国で泥まみれになって再会するシーンでは、何も考えることなく「ようやく見つけた」という気持ちでヨハンを救えました。詳細は言えないですが、終盤のシーンもそう。4カ月半という撮影期間中、役に向き合い、ずっとふたりで歩んできたからこそ、言葉はなくてもお互いの思いがあふれてきたんです。撮影も、当然ストーリーの順番どおりに撮っていくわけではなく、最初は日本、次は韓国、最後はベルリン。順番はめちゃくちゃでしたが、でも僕たち頑張ったよね?
続きを読む
テギョン:頑張った(笑)。終盤のシーンは、涙が止まらなくて大変でした。ただ、ヨハンは琉に比べて感情をオープンに表現するタイプなので、もちろん撮影は大変でしたが、演じやすかったです。
磯村:琉はあまり自分のことを口にしないですし、感情に蓋をして逃げている部分もあって。ですが、ヨハンと出会い、感情をストレートに伝える彼から徐々に影響を受けていきます。目線やちょっとした表情や間、しぐさで自分の感情をいかに伝えるか。また、10年間の時の流れの中で、どう変化をつけていくか。監督と話し合いながら作っていきました。
テギョン:役を演じることは、監督の頭の中にあるイメージを具現化していく作業です。それに対し、「役者としてはこう思っているよ」と対話しながら、緊密にチューニングを合わせていく作業がうまくいきました。
続きを読む
磯村:監督は、韓国の文化も大事にされていました。監督が思い描く韓国のイメージが実際に合っているのか、テギョンさんとも話し合いながら逐一確認しているのが印象的でした。本当に、すべてに嘘がないよう、丁寧に作っていました。

――ひとりの役を10年も生きるのは、特別な経験だったと思います。クランクアップを迎えた時、どんな気持ちでしたか?
磯村:不思議な感覚でした。それまで4カ月半かけて撮ってきたものが、そのワンシーンで終わってしまうんだなと。夢の中にいるような感覚がありました。
テギョン:長い旅路を終えるような気持ちでしたね。今までのことを思い出し、「こんな気持ちになるのか」と感慨深い思いになりました。その日は朝日を撮ろうとしていたので集合時間は夜中の2時。現場に行ったら、真っ暗な広い森に車だけがポツンとありました。前日までベルリンはとても暑かったのに、その日はすごくて寒くて。ダウンコートを着て、スタッフ全員で朝日が昇るのを一緒に待ちました。その時の光景、スタッフの皆さんの顔は、今も鮮明に覚えています。こんなに素敵な方々と集まる現場はもうないかもしれないと思うくらい心地よかった。皆さんと出会えたことへの感謝が詰まった作品になりました。
続きを読む
磯村:撮影が終わったあとのアフターパーティーでは、ふたりでお酒を飲みながら話しました。「テギョンさんがヨハンでよかったよ」というような話ができ、胸アツでした。
――完成した作品の感想は?
磯村:躍動感のある撮り方をしているところもあれば、登場人物の心の動きを繊細かつ丁寧に切り取っている場面もあって。美しい世界ですけど、胸が苦しくなるような感じもあると思っていて。僕らの10年間の感情の動き、そのグラデーションが、マジックアワーのようにとても美しく描かれていましたし、ドラマを観ながら「ああ、こういうシーンも撮ったな」「若いな」と撮影当時のことも思い出しました。
テギョン:若い(笑)?
磯村:撮影は2年前なので。今より少し若い(笑)。
テギョン:僕も、撮影していた時の光景がパノラマのように蘇りました。ストーリーにも美しさがあって、一視聴者としても楽しみながら観ることができました。
続きを読む

『ダ・ヴィンチ』2026年6月号では、磯村さん・テギョンさんのおすすめネトフリ作品を紹介しています!
取材・文:野本由起 写真:TOWA
いそむら・はやと●1992年、静岡県生まれ。2014年、俳優デビュー。出演作にNHK連続テレビ小説『ひよっこ』、映画『ヤクザと家族 The Family』『月』など。今秋、主演映画『mentor』公開予定。
オク・テギョン●1988年、韓国生まれ。2008年、2PMメンバーとしてデビュー。俳優として国内外で活躍し、ドラマ『ヴィンチェンツォ』『ハートビート』、映画『グランメゾン・パリ』などに出演。

Netflixシリーズ『ソウルメイト』
出演:磯村勇斗、オク・テギョン、橋本 愛、水上恒司、古舘佑太郎、イ・ジェイ、南 果歩、三浦友和 脚本・監督:橋爪駿輝 制作プロダクション:ROBOT 製作:Netflix
続きを読む
5月14日、Netflixで世界独占配信開始
とある事情から、すべてを捨てて日本を去った鳴滝琉。見知らぬ国の教会で命を落としそうになった彼は、韓国人のボクサー、ファン・ヨハンに救われる。それぞれが心に深い傷を抱える琉とヨハン。孤独な魂を共鳴させるふたりだったが、彼らを結ぶ運命の糸は残酷に絡まっていき……。ベルリン、ソウル、東京の3都市を舞台に、ふたりの青年が歩んだ10年間に及ぶ魂と愛の軌跡。
記事一覧に戻る