GWは、久々の帰省や親からの連絡で、心の古傷がうずきやすい季節である。本記事ではダ・ヴィンチWebで紹介した作品の中から、「毒親」という言葉では片づけられない支配・期待・呪いが、子の人生をじわじわ侵食していく小説を5作選んだ。読後に残るのは怒りよりも、逃げ道の少なさへの戦慄である。
▶毒母ですが、なにか
▶悪い姉
▶あさひは失敗しない
▶マザー・マーダー
▶朔が満ちる
続きを読む
1)『毒母ですが、なにか』山口恵以子

身の毛がよだつほどぶっ壊れている! 毒親目線で綴られる、ブラック過ぎる物語!
毒母側から語られることで、正義も反省もないまま子を支配する心理が露出する一作である。恐ろしいのは、加害が日常の顔で進行する点だ。親の言葉にいまだ心が縛られている人、怒りの根の形を知りたい人に薦めたい。
続きを読む
2)『悪い姉』渡辺優

“毒姉”の残酷さに振り回される少女。「家族だから」で許さなきゃダメ?
家族という密室で、“逃げないこと”が美談として強制されていく物語である。毒は親だけの専売特許ではなく、家族全体の力学として子を絡め取るのが怖い。血縁の免罪符にモヤつく人、身内を切れない自分を責めがちな人に効く。
続きを読む
3)『あさひは失敗しない』真下みこと

母親の“おまじない”は娘の呪いに…
「失敗しない」という愛の言葉が、いつしか子の選択肢を奪い、人生を歪めていくサスペンスである。恐ろしいのは暴力ではなく、善意が呪いに変質する瞬間のリアルさだ。親の期待に「正しさ」で応え続けてきた人ほど、胸の奥が冷えるはずである。
4)『マザー・マーダー』矢樹純

続きを読む
「この道を進んではいけない」と言うくせに背中を押すような…
引きこもりの息子を異常なまでに溺愛する母を中心に、家族の綻びが事件へと傾いていく物語である。怖さの核は、母の愛が保護ではなく管理として機能しはじめる点にある。家族の善意が重い人、介入と見守りの境界に悩む人に刺さる。
5)『朔が満ちる』窪美澄

家庭内暴力を振るう父に耐えかね、13歳の息子が斧を手に襲いかかる…
続きを読む
家庭が安全地帯ではない現実を、静かな筆致で掘り下げていく小説である。恐ろしいのは、暴力そのものだけでなく、外に説明しにくい家の空気が人格を作り替えるところだ。家庭の記憶に名前を付けたい人、過去を整理したい人の入り口になる。
毒親小説は、親を断罪して終わる読み物ではない。むしろ「どこまでが愛で、どこからが支配か」を読者の体温で測らせ、境界線を引き直させる装置である。GWのように家族との距離が縮む時期ほど、違和感は飲み込みやすい。まずは一作、最も刺さるものから読んで、自分の人生の主語を取り戻してほしい。
記事一覧に戻る