
『隠された家族』(のむ吉:著、小瀬古伸幸:監修/KADOKAWA)は、幸せな結婚生活の裏側にあった夫の秘密をきっかけに、家族の問題と向き合うことになる女性を描いたコミックエッセイである。
物語は、夫と穏やかな日常を送っていた主人公・愛美のもとに、義両親の事故の報せが届くところから動き出す。義父の葬儀に現れたのは、これまで一度も聞かされたことのない夫の兄だった。戸惑う愛美をよそに、夫やその家族はその存在について多くを語ろうとしない。やがて明らかになっていくのは、兄が長年家族の中で「隠されてきた存在」であった事実と、その背景にある「統合失調症」という病だった。 それは単なる秘密ではなく、家族全体が抱え込み、外から見えないようにしてきた現実であった。
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実在する兄を「隠す」という家族の歪みは病よりも重い。兄の存在を周囲に知られまいとする夫の行動は、愛美にとって突然突きつけられた裏切りであり、夫はもちろん義家族への信頼を大きく揺るがし、生じた軋みが物語全体に広がっていく。一方で、愛美も実家の母親と折り合いが悪く、家族の問題を抱えている。互いの家族の問題を、夫婦が手を取り合い、どのように解決するのか注目してほしい。
本作で描かれる問題は、メンタルヘルスの重要性や家族の多様化が取り沙汰される現代においては決して特別なことではなく、むしろ「どこにでもあり得る現実」と言えるものではないだろうか。幸せそうな家庭の裏側にあるさまざまな事情や見えない葛藤こそ「普通の家族」という概念なのかもしれない。
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「家族とは何か」という重い問いを読み手に投げかける。家族を守るための沈黙は、果たして正しかったのか。大切だからこそ、ときに厄介な「家族」という存在について考えさせられる作品だ。
文=座美山佐須郎
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