
出産経験のない女性のもとに、ある日突然「あなたの子どもです」と少女が訪ねてくる。少女は、女性の“卵子提供”によって生まれた子どもだった——。『egg わたし、あなたの子どもです。』(鳥野しの/KADOKAWA)は、他人の卵子や精子を利用することで誰でも子どもをつくることができる制度“egg”がある架空の社会の物語。
本作では、ドナー(卵子提供者)とレシピエント(卵子提供によって生まれた子ども)の人生の交わりを描く。二者は求め合うことも求め合わないこともあるが、その関係は複雑だ。親になる資格とは? セクシュアリティとは? そして人間同士のつながりとは? 人と人との在り方について改めて考えさせられる本作に込めた想いを、著者の鳥野しのさんに聞いた。
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——本作の軸となる「egg」は架空の制度ですが、あったらいいのにと願う人は少なくないと思います。架空の社会的背景は、どう構築していったのでしょうか?
鳥野しのさん(以下、鳥野):「卵子提供をした経験はあるが、出産までは請け負っていない人たち」を主人公にするなら、その裏には代理で出産を引き受けた人たちもいたはず…。ですが、現状では代理母となる方たちの権利や安全が十分に守られているとは言えませんし、さまざまな問題があります。
そこに手をつけたら中途半端では済まないですし、作品の最初のテーマから外れてしまう。ですので、申し訳ないけれどファンタジーに振り切って「これは人工子宮が実用化された世界だよ!」ということにさせてもらいました。
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——もし近未来、本当にeggのような制度が生まれるとしたら、どんな社会になると思いますか?
鳥野:こんな設定を描いておいてなんですが、人類にはまだ早いんじゃないか…と思います。
——eggは、少子化対策と同性婚認可に伴って合法化された制度です。少子化や同性婚にまつわる課題は、実際の社会でもまだまだ山積みだと思います。そんな社会に対して問題意識を持つこともありますか?
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鳥野:同性婚を含む婚姻の平等については正直なところ、5〜10年前くらいまでには日本でも実現しているだろうと思っていました。「2026年だけど、いまだにできてないよ」と12年前の自分に伝えたら、「えっ、なんで!?」と驚くと思います。
取材・文=吉田あき
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