
『マウンティング男の価値観をぶち壊した結果』(ぱん田ぱん太/KADOKAWA)は、転職先で出会ったマウンティング男との対峙を通して、現代の職場に潜むジェンダー意識の歪みを描いたコミックエッセイである。
主人公・中山ミキは小柄だったため「女の子らしく」育てられたが、ある日プログラミングに興味を持ったことで、親の反対を押し切って有名大学の工学部を卒業し、難関資格を取得して優秀なシステムエンジニアとなった。しかしキャリアアップのためヘッドハンティングされ転職するものの、その会社で女性に対して時代錯誤な価値観を押しつける同僚・橘と出会い、その価値観に苦しめられてしまう。
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物語は、橘が「女性だから」という理由で雑務を押しつけてきたり、能力を軽視したりする言動に対し、ミキが真正面から向き合っていく過程を軸に展開する。職場という閉じた空間の中で橘から繰り返しぶつけられる小さな違和感は、やがて無視できない問題へと変わっていく――。
しかし、ミキは一方的に傷つけられる存在ではなく、自らの言葉と行動で相手と向き合う力を持ち合わせている。その姿はただ対立を煽るのではなく、むしろ思考停止した価値観を揺さぶる迫力をあわせ持っている。固定観念に対して正面からぶつかることが、どのような結果をもたらすのかが本作の見どころだ。
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日本では女性初の首相が誕生し、長年指摘されてきた「ガラスの天井」が打ち破られたと大きく報道された。それよりも前から社会や企業において性別の違いによる価値観の見直しの必要性が叫ばれてきたが、あらためてスタートラインに立った状況と言えるだろう。本作は、無意識に持ってしまっている偏見や思い込みが時に他者を傷つけることを知り、その意識を変えるための示唆を与えてくれる。個人の感覚にとどまらず、社会全体の課題としてのジェンダー問題を考えさせる作品だ。
文=七井レコア
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