
ゆるく笑える記事やラジオなど、多岐にわたる発信をおこなっているWebメディア「オモコロ」。2026年2月20日に前編集長・原宿氏が退任し、みくのしん氏が3代目編集長に就任した。みくのしん氏はこれまでも「オモコロ」の編集部員かつライターとしても活躍しており、『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』などの著作も持つ。みくのしん氏に今後の編集長としての意気込みや、「オモコロ」の運営方針について語ってもらった。
――オモコロ3代目編集長への就任、おめでとうございます。「編集長」と肩書きが変わった今、改めて心境の変化はありますか?
心境の変化とかは特にないですけど、ふと「自分は編集長だ」と思う時があって、そんな時はフルーツを買いに行ったりしてます。僕、節約が趣味というか、お金を使うのが苦手なんですよ。だけど、何を買うかは決めないまま、今日は絶対にフルーツを買うぞと心に決めたまま果物屋さんに行きます。この間は文旦を買いました。
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――いくらだったんですか。
500円です。
――かなり、ささやかですね。
ささやかなんですけど、本当にそういう時に「編集長だ」っていうのを感じますね。あとは、今まで見てなかった漫画とか名作のアニメや映画を見るようになって、ちょっと生意気かもと自分でも思います。でも、不思議と気が大きくなっているのかそういうのを見ている時に罪悪感が湧きづらいんですよね。着実に自分の自意識の中に「編集長」という要素が入ってきています。今のところは就任してまだ数ヶ月ですけど、どんどん自分に染みわたっている気がします。

――新編集長として、どのようなお仕事をされているのでしょうか?
これまでも編集部に所属はしていましたが、実は今までの仕事と、編集長になってからの仕事とであまり変化はないんですよね。まず一つは、「オモコロ」でいつ誰の記事を公開するか決める編成の仕事です。オモコロは平日の毎日更新が基本なのですが、僕が編集部に入ってすぐ編成を任されたんですが、その時点で記事のストックが 2つぐらいしかなかったんですよ。波乱の幕開けだって思いました。そこから僕が「おりゃぁあっ!」とオモコロライターさん(以下ライター)に連絡して、ある程度は編成が回るようになりました。「おりゃぁあっ!」大事です。
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あとはライターの記事の制作の手伝いをしています。特に写真撮影ですね。一人で撮影となるとそもそも撮影すらしないし、なによりあまり楽しくないんですよ。でも、誰かが手伝うことで、イレギュラーがその場で起こって面白くなったりするんです。こういうのは直接教えてもらってはいませんが、前編集長の原宿さんがやっていたのをライター時代に見ていて「これが編集長の仕事なのか……」と感じて、僕もそれを引き継ぎました。それと記事の打ち合わせや「オモコロ合宿」という、1年に1回、ライターみんなで集まって1日お酒を飲んだりご飯を食べたりするだけの会があるんですけど、そういうみんなで集まって楽しむ企画は僕が引き続きやっていくと思います。
ライターとのコミュニケーションがすごく大事だっていうのは前から感じていたことなんですよね。自分がライターになりたての頃に、よく飯に連れて行ってもらって、それがすごく楽しかったし、嬉しかったんです。なので「この人たちとずっと友達でいたいなぁ」っていう気持ちがありました。今は逆に僕がそういう嬉しい空間を作りたいと考えています。
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――編集長になったあと、感じた課題はありますか?
色々な「こうしたい」っていう感情があるじゃないですか。でも、その感情だけをダイレクトに伝えても、会議ではなかなか通りにくいんですよね。それを副社長の永田さんに相談したら「みんな自分の感情を相手に伝えるために、言葉を使ってる」って言われて。電流が走りました。感情をちゃんと相手に伝わるように言葉にしないといけない! 当たり前のことかもしれないけれど、僕、そんなこと知らなかったんですよ。
今の課題は、感情をちゃんと自分の言葉にして、相手に納得してもらうことです。ただ、これが難しい。だけど、ちゃんと言葉で相手に伝えないといけない。そうしないと、オモコロライターのみんなを楽しませたり、ピンチの時に救ったりすることができないかもしれない。覚悟を決めて何回もアタックして怒られながらやり続けるしかないなって思ってます。本当に。

――次はオモコロ新編集部についてもお聞かせください。新編集部には新しく雨穴氏などもアサインされていますよね。このメンバーはどのようにして決定したのでしょうか?
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僕は文字を読むのがちょっと苦手なので、まずは「文字が読める人」を求めていました。記事を読むのに時間がかかってしまうと編成業務に手が回らなくなったりもしますし。それに、僕が作る記事は勢いで書く記事が多いんですが、「オモコロ」に掲載している記事って本当に色々な種類があって、ホラー作家の梨さんとか、加味條さん、漫画を描いている方や、記事で色んなことを表現したい人とかに対しても、アドバイスを伝えられたら嬉しいなと思いまして。結果として恐山さん(ダ・ヴィンチ・恐山)、かまど、うけっちゃん(雨穴)を編集部メンバーに選びました。
あと、そもそも「オモコロ」がめちゃくちゃ好きな人が編集部に居てほしいなという想いが強くありました。世間のイメージの「オモコロ」って、ゆったりしてて楽しそうな感じでだと思うんですが、でもその気楽なイメージに飲まれすぎると記事もどんどん書かなくなって、スケジュールも適当になって、一色ずつ色がなくなって、最後は砂になってしまうんですよね。編集部までそういう雰囲気ではいけないので、「オモコロ」が好きで、なおかつ締めるところは締められる人を集めました。
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――みくのしんさんが人選して声掛けをされたんですか?
そうですね。もちろん会社とも相談はしていましたけど、本人たちには僕から一人ずつ声をかけました。断られたらどうしようって結構緊張しました。
あと実は新編集部には、もう一人社員が居るんです。編集部内のディレクターのような役割の方で、その人もかなり大事な存在です。もちろんその人もすっごく「オモコロ」が好きで。記事に使われている写真を見ただけで「あの記事ですね」って分かるくらい詳しいんです。もし「オモコロ」が全てどろぼうに盗まれて空っぽになってもこの方が記憶で復旧してくれるので安心です。僕としてはその方のことも強く推していたので、編集部にディレクターとして入ってくれて本当に良かったなと思っています。
――編集部メンバーに雨穴さんが入ったというのも驚きでした。
うけっちゃん(雨穴)はすごく謙虚で、編集部に誘った際に「私なんかが、いいんですか?」みたいに言ってくれてました。僕に怒られると思っていたらしいです。
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うけっちゃんには、当初僕のメンタルケア要員として居てもらうつもりだったんですよ。僕の不安を聞いてほしい。やさしく頭をなでなでして欲しい。とお願いしたんですけど、今はめちゃくちゃ記事の編集をしてもらってます。一番に「オモコロ」のことを考えてくれているように見えて、活発にライターとやりとりしてくれてますね。色々な施策をやっていこうという話し合いの中でも、どんどんアイデアを出してくれるんです。
――かまどさんやダ・ヴィンチ・恐山さんはどういったお仕事をされているんですか?
かまどに関しては、面白い記事を作るという点において一番だと思っています。ウケるアイデアや記事の構成力がとにかくすごい。なので、座談会記事(ライターが複数人で作成する記事)だったりは、主にかまどに見てもらってます。今までは僕が感覚的に「面白いね」などアドバイスしていたのですが、かまどはロジックで考えて、具体的にどうしていくのかという質問をしてくれるので、本当に助かっていますし、ライターも嬉しいと思います。
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恐山さんは唯一、前の編集部から引き続き編集部に在籍している方です。編集部が切り替わる時に「私は残りますよ」と言ってくれたんです。そう言ってくれたのが嬉しくて編集部に誘ったという面もあるんですが、恐山さんって「オモコロ」らしいんですよね。僕が「オモコロ」を好きになってライターになった時の、芸人でもないYouTuberでもない特殊な面白さの雰囲気を持っている。そんな人が編集部に居てほしいなと思って、恐山さんに入ってもらいました。
――ダ・ヴィンチ・恐山さんは、「崩れ行く城を見たいから編集部に残った」とラジオでおっしゃっていましたが…
照れ屋なんですよ。
みんな好きでしょうがないのに…。照れ屋でしょうがないんです。本当は「オモコロ」を生きながらえさせたいんです。編集部のみんな、本当に「オモコロ」が好きなんだよな。それが嬉しいですね。

――新体制になった編集部で、新しくやっていきたいことはありますか?
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新しい施策をどんどん打っていきたいなと思っています。せっかく編集部が変わったので、変化できる部分は色々と変えていきたいですね。例えば「土曜日のまとめチャット」という、1週間の「オモコロ」の記事を振り返るハイライト的な記事があるんです。今まではチャット形式で振り返りをしていましたが、今は記事に対して編集部が一人一言コメントを入れる、という形も試しています。コメントも、一言どころかかなりの文章量を書いているので「やりすぎだよ」って言われたりもしていますが、こういうのって最初にやらないと後々やれなくなっちゃうと思っているんです。疲れ切るまで頑張りたいですね。
他にもあとは、Xの記事機能を使って過去の記事を出しなおして、X内でも「オモコロ」の記事が読めるようにしてみたりも。それと、ラジオを盛り上げたいなと思っています。ラジオの切り抜き動画を作ってXに出してみたりしたいですね。
それと、「オモコロ」のウェブサイトに来る人を増やすというよりも、「オモコロ」自体の知名度を上げる方法を考えてますね。Xでの記事みたいに、SNSを普通に見ている人が外部から「オモコロ」を知るきっかけをどんどん増やしていきたいなと思っています。最近はインスタで告知したりもしています。
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あと、ライターの一覧のページに「戦士」の欄を作りたいと本気で思っています。ライターから選抜した特別なメンバーで「戦士」を作りたい。これは編集部の誰にもハマってないのですが、色んな所で言って必ずや実現しようと思っています。
そして、「オモコロ」を活気づけて、4代目の編集長を作ることが大きな夢です。とにかく「オモコロ」がずっと元気でいられるようにしていくっていうのが目標ですかね。

取材・文=岩﨑彩乃、撮影=是永日和
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