
家族なのだから仲良くすべき。お姉ちゃんなのだから我慢すべき。そんな「べき論」に縛られ、本音を押し殺してきた経験はないだろうか。理不尽な扱いを受けても、声を上げれば「嫉妬深い」「器が小さい」と責められる。家族という関係性の中では、怒りを表明することも難しいのだ。『世界で一番嫌いな女』(ただっち/KADOKAWA)は、そんな怒りを抱えた人々に寄り添う作品である。
本作の主人公のエリは26歳。幼い頃から妹のまりあに、大切なものを奪われ続けてきた。おもちゃ、彼氏、母親からの愛情。そして今度は、婚約者まで狙われようとしている。周囲から見れば、まりあは「かわいい妹」だ。明るくて人懐っこく、誰からも好かれる。だからこそエリが「妹に嫌がらせをされている」と訴えても、信じてもらえない。それどころか「お姉ちゃんなんだから」と我慢を強いられ、エリばかりが悪者扱いされてきた。
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実家で婚約者とまりあが遭遇してしまい、エリの不安は現実になっていく。まりあは巧妙に彼に近づき、いつの間にか彼までもが「まりあちゃんは悪い子じゃない」と妹を庇うようになる。結婚式が近づくとともに、婚約者とまりあの親密さが浮き彫りになっていき、追い詰められたエリは、ある決断を下すのだった……。
見どころは、エリが選ぶ「逆襲」の方法だ。感情に任せた破滅的な行動ではなく、冷静に証拠を集め、妹の「いい子」の仮面を剥がすための一手を打つ。「可愛げがない」「真面目すぎる」と妹と比較され、コンプレックスだったその冷静さこそが、最強の武器となったのだ。
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我慢することが正義ではない。家族だからといって、理不尽に耐え続ける必要はない。エリの反撃は、同じような状況で悩み続ける人への、痛快なエールになるだろう。「世界で一番嫌いな女」と向き合い、ついに反撃の一手を打ったエリの選択を、ぜひ最後まで見届けてほしい。
文=ネゴト / くるみ
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