
『茶トラのやっちゃん』(類/KADOKAWA)は、道端で鳴き続けていた一匹の猫を保護したことから始まる、家族と猫との暮らしを描いた人気シリーズの1作目だ。
物語は、著者が偶然出会った茶トラ猫・やっちゃんを迎え入れるところから始まる。はじめての猫との生活は戸惑いと驚きの連続だ。野良猫だったこともあり、病院に連れて行けば猫風邪、回虫、ノミダニのフルコンボ。元気を取り戻したかと思えば障子を破り、容赦ない肉球パンチを繰り出し、そして脱走する。やっちゃんはとにかく自由奔放で家族の日常をかき回していく。しかしそのひとつひとつの出来事が、猫を飼うことの喜びにほかならない。
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本作はペットとの生活を理想化しすぎていないところに魅力がある。猫との暮らしは癒やしだけでなく、手間も混乱も伴い、奮闘しながらも、やっちゃんとの関係を徐々に築いていく様子がしっかりと描かれているのだ。もちろん、かわいい猫漫画ではあるが、動物を家族として迎えるための時間の積み重ねを描いている点が印象的だ。
そして特筆すべきは、終始軽やかでユーモラスな語り口だ。やっちゃんの予測不能な行動に振り回される日常がさまざまな「ネタ」とともにコミカルに描かれ、読み手は思わず笑ってしまう。しかしその笑いの裏には、保護した命と向き合う責任や、家族として受け入れていく過程の温かさが確かに存在している。騒がしくも愛おしい日々の描写は、読む者の心を自然とほぐしていく。
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動物という言葉を交わせない相手であっても、時間をともにすることで確かに「関係」が築かれていく。やっちゃんという存在を通して描かれるのは、特別ではないが確かにかけがえのない日常である。猫を飼う楽しみをすでに知っている人だけでなく、今後、猫との生活を検討している人にも、ぜひ手にとってもらいたい作品だ。
文=Y・イノウエ
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