
2023年に法改正がなされ「不同意性交等罪」が施行された。
だが「行為の前に“同意”を取るなんて、無理じゃない?」「同意書でも書けってこと?」なんて思った方もいるかもしれない。
そこまでではなくとも、未だに多くの人が「不同意性交」について、ほとんど理解していないような気もする。「性」というものがこれだけ身近にありながら、圧倒的に、知識が足りていないのではないだろうか。
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『同意なんかしていない ―性被害者たちに何が起きたのか―』(菊池真理子/文藝春秋)は、不同意性交をめぐる8人の方々の取材を通し、リアルな被害者の声や専門家の見解を得ることができるノンフィクションコミックエッセイである。
著者の菊池真理子さんは、若い頃に性暴力被害を受けたというサバイバーの一人。しかし長年、端から見たら「普通の明るい女性」として生きてきた。被害のことは忘れてしまおうと思っていたようだ。
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だが昨今、「不同意性交」に関連するSNS上での非難――例えば、「本気で嫌なら抵抗するはず」「ホテルまでついて来て不同意はあり得ない」などを見るにつれ、「謎」を抱くようになったとか。
自分が被害に遭った際の行動や、その後の生き方は、世間がイメージする「かわいそうな性被害者」ではないのではないか。また、自身に起こったことは個人ではなく、社会問題と言えるのではないかと。
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それから菊池さんは、実際に被害に遭った方と出会い、話を聞くことに。
有名芸能人からの性被害に遭ったものの、世間からは厳しい目にさらされているさやかさん。義父による性暴力を受け、その後も性産業で働くことになった絵里子さん。理解されづらい夫婦間の「不同意性交」に苦しんでいたさちさんといった、様々な状況に置かれた方々の「リアルな声」が描かれている。
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抵抗しない=“同意”ではない
被害者だけではなく、専門家や支援団体への取材などもあり、不同意性交に関連する多くの知識が得られるのも本作の特徴だ。
例えば「抵抗しなかったのだから“同意”になるのでは?」という疑問を持つ方も、中にはいるのではないだろうか。実際、著者の菊池さんが被害に遭った時も、ほぼ無抵抗であったという。
しかしそれは「凍りつき」という、生物としてごく普通の反応なのだと、トラウマ治療を専門とされている公認心理師の花丘(はなおか)先生は話す。
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少し難しく、深刻な話題ではあるので、決して読むのが簡単とは言えない内容ではあるのだが、マンガだからこその「読みやすさ」があるように感じた。10代の若い方にも、分かりやすく実情と知識を伝えられる一冊になっていると思う。
また本書で最も記憶に残っているのは、長年教育の現場で性教育を続けてきた村瀬幸浩先生のお話だ。
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村瀬先生は「被害に遭わないための性教育」や「生殖のため」ではなく、「幸せに生きるための性教育」が必要だと考えているそうだ。

同意か不同意か。二項対立ではなく、「合意」を基準に、お互いの「性」というものを受け入れられるようになってほしい。そしてそのために必要な知識と、豊かで明るい「性」への可能性が、本作には詰まっている。
文=雨野裾
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