※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年5月号からの転載です。

故郷を追われた難民の幼い姉弟が、命懸けで国境を越えてゆくロードムービーで、ベネチア国際映画祭「オリゾンティ部門」審査員特別賞に輝いた藤元監督。
「この12年間、映画監督としてミャンマーを中心に東南アジアで活動するなかで、ロヒンギャの人々の悲劇を何度も耳にしてきました。3本目に何を創ろうと考えたとき、『ロヒンギャの人々をいま撮りたい』と。取材を進めながら、その想いがだんだん確信へ変わっていった形です」
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当事者や支援に関わる人々の生の声を集めつつ脚本にも着手。
「頭を悩ませたのが、厳しい現実をどこまで反映させるか。リアルに反映させると、ただのスプラッター映画になりかねないですから。撮りたいのは〈個人の物語〉。ドキュメンタリーではなく、物語として残したい。“悲惨だ、悲惨だ”ばかりではなく、彼らの願いや想いを観客に届けていきたいと思いました」
演技経験のないロヒンギャ難民が、総勢200名も出演。物語を牽引するのは、親の移住先で生まれた第二世代の姉弟だ。
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「微笑ましいですよね。ふたりが本物の姉弟なので、親密な関係性、ふとした日常の会話や仕草というのを、すごくナチュラルに撮らせてもらえる。ふたりの存在は本当に大きかったです。しかも監督が何かした結果、あの演技が引き出せたわけではなくて。こういうシーンだから、ここではこう動いてとか、こう演じてとか、最低限の説明をしただけ。シンプルに天才でした」
天性の勘プラス順撮り効果?
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「僕は基本的に時系列に沿って撮ります。順撮りというのは、気持ちが連続していく撮影だと思うので。昨日やったことが今日に繋がっているとの意識は、撮る側にも影響しますね。当事者の体験を脚本にフィードバックする作業を撮影中も続けていたので、そもそも順撮りじゃないと無理なんです。バラバラに撮ると途中で修正できませんから」
取材・文:柴田メグミ 写真:鈴木慶子
ふじもと・あきお●1988年、大阪府生まれ。ビジュアルアーツ専門学校大阪で映画制作を学ぶ。在日ミャンマー人家族を描く2018年の初長編『僕の帰る場所』が、東京国際映画祭アジアの未来部門 作品賞&国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞。続く『海辺の彼女たち』はPFF「大島渚賞」、新藤兼人賞、TAMA映画賞最優秀新進監督賞ほか、多数の賞に輝いた。
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『LOST LAND/ロストランド』
監督:藤元明緒 出演:ムハマド・ショフィック・リア・フッディン、ソミーラ・リア・フッディン
©2025 E.x.N K.K.
2025年日本、フランス、マレーシア、ドイツ 99分 配給:キノフィルムズ
4月24日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
●難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラ。ふたりは家族との再会を願い、叔母とともに遠く離れたマレーシアへ旅立つことに。パスポートをもてない彼らは、密航業者に導かれるまま漁船へと乗せられるが……。
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