
『腐女医の医者メシ!』(さーたり/KADOKAWA)は、現役の外科医であり、3人の子どもを育てる母親、そしてオタクでもある著者によるコミックエッセイ。人気シリーズ「腐女医の医者道!」のスピンオフとして描かれた本作は、そのタイトル通り「食」というテーマに深く切り込んでいる。
まず目を引くのは、医師の知られざる食事事情だ。ドラマなどではどこか格好よく描かれがちの外科医だが、現実は想像以上に過酷である。外来や手術の合間にほんの数分間で食事をするのは日常茶飯事だ。著者は「医者はだいたい早食い」と語るが、その理由はいつ呼び出されるかわからないという状況下に常に身を置いているからだ。当直中に短時間なら外出が許される病院に勤務していたときは、徒歩で牛丼店に行ったものの食べようとした瞬間に呼び出されて救急車とデッドヒートを繰り広げる話など、笑いの中にも医療現場の緊張感が伝わってくる。
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そして、消化器外科医の立場から見た「食べられない人」たちのエピソードは、グルメ漫画にはない示唆を与えてくれる。病気で食事を制限される患者の苦悩を知る著者だからこそ、口で食べられることの尊さと、日々何気なくしている食事がどれほど幸せなことかを再確認させてくれるのだ。
一方で、家庭人としての「食」の描写も別の意味で非常にパワフルだ。仕事に家事に育児にと目が回るような忙しさの中で生み出される「さーたり家のレシピ」は大胆不敵。週6日でおにぎりが登場したり、金曜は何が何でもカレーの日と決めていたりと、効率を重視しながらも家族ぐるみで食を楽しむ姿勢を徹底している。
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さらに、著者の3つめの顔である「オタク」の食文化も、コラボカフェ事情という形で語られている。好きな作品の世界観を味わうため、仕事や家事のスキマに足を運ぶのだが、それが多忙な毎日の大切な活力源になっているのだろう。
読後に食べるご飯が、少しだけいつもよりおいしく感じられるかもしれない。
文=坪谷佳保
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