
『心の不倫は罪ですか?』(とげとげ。/KADOKAWA)は、「体の関係がなくても不倫と言えるのか」という、現代の夫婦関係の微妙なラインを描いたコミックエッセイだ。本作の中心にあるのは、家庭の中で孤独を抱えた女性の心の揺らぎである。
主人公は、結婚20年目を迎えた43歳の主婦・胡桃(くるみ)。専業主婦として家庭を支えてきた彼女は、息子の不登校をきっかけに自分の存在意義に大きな揺らぎを感じるようになる。周囲の働く友人たちは充実した人生を送っているように見え、自分だけが社会から取り残されたような孤独を抱えてしまうのだ。さらに夫は苦しさに寄り添うどころか、むしろ責めるような態度を見せ、胡桃は追い詰められていく。
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そんなある日、公園で出会った宅配業者の男性と胡桃は少しずつ言葉を交わすようになる。彼との関係は肉体関係のない、プラトニックなものだ。やがて彼との何気ない会話や優しさが、孤独な胡桃の心を救う存在になっていく。「やましいことはない」と自分に言い聞かせながらも、誰にも言えない関係であることもまた事実だった。
本作の面白さは、不倫を「肉体関係」ではなく「心のつながり」という視点から描いている点だ。物語の背景には、熟年夫婦のすれ違いや「中年クライシス」と呼ばれる人生の転換期の問題もある。子育てと家庭での役割を中心に生きてきた女性が、立ち止まったときにふと感じる空虚さや孤独は決して珍しいものではない。誰にでも起こり得る問題だろう。
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「心の浮気」は果たして罪なのか。それとも心の隙間を埋めるためのささやかな逃げ道として許されるものなのか。本書はその答えを簡単に示さない。孤独に打ちひしがれた心が別の居場所を求める、ある種当たり前とも言える心理を描き出し、読み手に審判を委ねる。
文=ヒルダ・フランクリン
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