
『最後の晩ごはん』(森永あぐり:漫画、椹野道流:漫画原作、くにみつ:キャラクター原案/KADOKAWA)は、椹野道流氏による人気の料理青春小説を原作にした作品で、人生につまずいた青年が、定食屋での出会いを通して少しずつ前に進んでいく姿を描いている。
主人公は、若手イケメン俳優の五十嵐海里。彼はねつ造されたスキャンダルによって芸能活動を休止せざるを得なくなり、仕事も名声も一気に失ってしまう。居場所をなくして絶望する海里が出会ったのが、定食屋「ばんめし屋」を営む夏神留二。夏神に拾われた海里は、その店で働くことになり、新しい生活を始める。
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海里は最初、自分の人生が壊れたことにショックを受け、投げやりな気持ちでいる。しかし、「ばんめし屋」で働き、夏神や客たちと関わるうちに、少しずつ前を向けるようになっていく。料理を作り、誰かに食べてもらうという日常の中で、彼は自分の居場所を見つけていくのだ。
物語の舞台になる「ばんめし屋」は、日没ごろから日の出まで営業し、メニューは日替わりの1種類のみという少し変わった店だ。とはいえ出てくる料理は、ハンバーグや生姜焼き、だし巻き卵といった、心をほっとさせてくれるような手作りの家庭料理だ。だが、この店が普通の定食屋と違うのは、客の中には人間だけでなく、幽霊もいることだ。生前の心残りを抱えた幽霊たちが最後の晩ごはんを求めてやってくるという世界設定が本作の大きな魅力になっている。
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どんなにつらいことがあっても、温かいごはんを食べれば元気が出る。そんな当たり前だけど大切なことを教えてくれるはずだ。そしておいしそうな料理と心温まるドラマが詰まったこの物語は、どこかドライになった現代社会に生きる私たちの心を癒やしてくれるだろう。
文=ゆくり
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