
漫画家・叶輝(かのうあきら)さんと、うつ病により休職を繰り返していた朝待夜駆(あさまちよかけ)さん。二人のもとにたびたび足を運んでいた地域猫はある日、病気で瀕死の子猫を連れてくる。「朔太郎」と名付けられた子猫は、深刻な病気を患っていた。二人は朔太郎に寄り添いながら、日々を重ねていく……。
エッセイ漫画『スローステップ朔太郎』(叶輝:漫画、朝待夜駆:脚本/KADOKAWA)は、命と希望のリレーを描いた作品だ。2025年春に上下巻で発売された本作は、仕事の悩み、病気との向き合い方、経済的な不安など、多様な困難を抱える読者から共感を呼んでいる。
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それぞれが抱える困難の中で見えてきた「支え合うこと」の新しい形とは? 実話をもとに、ユーモアと愛情で表現した本作の制作背景を、作画担当の叶輝さんと、脚本を手がけた朝待夜駆さんに伺った。
――反復性うつ病を患っていた朝待先生は、病状が重いときには「電車に吸い込まれそうになったことが何度かあった」と叶先生に話をします。それに対して、叶先生が朝待先生に「絶対私と朔太郎のところに帰ってきて」「人の人生変えておいて、私と朔太郎を放り出そうとすんな」と伝えるシーンは、印象的です。当時の心理状態を教えてください。
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叶輝さん(以下、叶):とにかく、朝待くんと朔太郎を生かすのに必死でした。うつ病を患っていた当時の朝待くんは、受信する情報を処理しきれていないように見えました。もともと頭が良くて感受性も豊かなのに。……吹いたら消えてしまいそうで、失う可能性があると思うとすごく怖かったです。
どんな選択をしてもそれは朝待くんの自由ですが、そっちからプロポーズして私の「結婚は墓場」という価値観を変えたくせに、自分は早々に退場しようとするなんて! という一方的な憤りもありました。あのときはまだ「一人にしないで。老いて死ぬまで一緒にいたい」なんてかわいい言い方はできなくて。今でも多分、そんな言い方は無理ですが(笑)。
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――朝待先生の心理状態に引っ張られないようにすることも、時には大事だと思います。当時、どのようなことを意識していましたか?
叶:私は、「個人は個人」と考えるタイプ。同じ時間を共有していく関係ではありながらも、「独立した人間同士が一緒にいる」と区別していたんです。その上で「今、必要なことは何だろう?」と、支える人間としてのポジションを守っていました。
それに、朝待くんは私と「一緒に暮らしたら、面白くなるかもしれない」と思って結婚したから、「じゃあ、面白さを目的にして解決していこう!」みたいな。……違った?
朝待夜駆さん:合ってる合ってる。叶先生はあまり感情的にならず、問題解決思考なのが私としてはありがたかったですね。
取材・文=松本紋芽
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