
漫画家・叶輝(かのうあきら)さんと、うつ病により休職を繰り返していた朝待夜駆(あさまちよかけ)さん。二人のもとにたびたび足を運んでいた地域猫はある日、病気で瀕死の子猫を連れてくる。「朔太郎」と名付けられた子猫は、深刻な病気を患っていた。二人は朔太郎に寄り添いながら、日々を重ねていく……。
エッセイ漫画『スローステップ朔太郎』(叶輝:漫画、朝待夜駆:脚本/KADOKAWA)は、命と希望のリレーを描いた作品だ。2025年春に上下巻で発売された本作は、仕事の悩み、病気との向き合い方、経済的な不安など、多様な困難を抱える読者から共感を呼んでいる。
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それぞれが抱える困難の中で見えてきた「支え合うこと」の新しい形とは? 実話をもとに、ユーモアと愛情で表現した本作の制作背景を、作画担当の叶輝さんと、脚本を手がけた朝待夜駆さんに伺った。
――これまでに、猫を飼った経験はありましたか?
朝待夜駆さん(以下、朝待):ないですね。
叶輝さん(以下、叶):私もないですが、ワンちゃんは飼ってました。でも、犬と猫では、感情の表現の仕方や人間へのコミュニケーションの取り方が違う。犬はまだ表情豊かな気がします。最初は猫の表情が読み取れずに、「何をしてほしいのかな?」「今何を考えているんだろう?」と思っていました。
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――猫の飼い方や習性などは、勉強されたのでしょうか?
叶:ネットや本の情報を二人で見ましたね。あとは、接していく中で理解が深まっていきました。例えば、犬は感情が昂ると尻尾をブンブン振りますが、猫はもっとクネクネしているというか。あと、おヒゲが少し下に垂れているとニュートラル、ぽわっとふくらみはじめると機嫌が良い、みたいなこともわかってきて。
――朔太郎が来てくれた日を振り返ると、どんな気持ちでしたか?
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朝待:私にとっては、すべてが変わった始まりの日で、今思えばまさに朔日(ついたち)のようでした。
叶:戸惑っていました。関わるべきか、無関心でいるべきか。でもやっぱり、関わりたい気持ちのほうが大きかったですね。
――朔太郎と過ごしたことで「生きる」ことをどのように捉えるようになりましたか?
朝待:「生きる」こととは、すなわち「終わり」に向かっていくことだと、強く意識するようになりました。あらゆるものには「終わり」があります。それをわかって、認めて生きていく。そして自分にも他者にも、最高のお別れを言えるような態度で生きていく。それが、私にとって「生きる」ということになりました。
取材・文=松本紋芽
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