
『毒親だけど、愛されたかった』(鈴村五月/KADOKAWA)は、毒親へと変貌していく母と、ひとりその犠牲になった4人姉妹の長女の姿を描いたコミックエッセイだ。
主人公・五月が幼稚園生の時代から物語が始まる。次女と三女がまだ手のかかる年齢で母親はそのふたりにかかりっきりだったため、長女の五月は母親に甘えることを我慢し、ワガママも言わず「いい子」にしていた。それが母親に愛される唯一の手段だったからだ。そのころの母親は基本的に優しかったが、些細なことで豹変して五月を怒鳴り、手を上げることもあった。そんなとき五月が謝ると、母親は涙を流し、反省の言葉を口にして優しくしてくれるのだが、それが五月の今後の人生に大きく影響する呪いとなる。
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その後、四女が生まれるも家庭を顧みない父親が原因で離婚。母親は4人の子どもを育てるために頑張り、やがて五月に鉛筆1本買ってあげられなかった生活は一変する。だが裕福な暮らしを味わってしまった母親はいつしか仕事をしなくなり、「母親であること」も放棄し、専門学校生の五月の夜のアルバイトの稼ぎに頼るようになるのだった。
五月のなかには常に客観的に自分を見るもうひとりの五月がいる。母親の犠牲になり苦しむ自分に対していつも「それでいいのか」と問いかけてくるのだが、それでも五月は、毒親と化してしまっても、どんな形であれ愛情を注いでくれた母親を見捨てることができなくなっていた。幼少期に母親が娘にかけた呪いと、支えてくれる娘への母親の「依存」により歪んでしまった親子関係が、互いを大切に思う気持ちから生まれたと思うと胸が苦しくなる。
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やがて五月はこの呪いを断ち切るきっかけを得ることができるのだが、それはぜひ本書を手にとって確かめてほしい。そして今毒親に苦しんでいる人は、この五月の姿から、自身が置かれている状況を客観的に見る視点と、そこから脱却する勇気をもらえるはずだ。
文=nobuo
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