
恋人に依存しすぎてしまう「共依存恋愛」の危うさを、実体験をもとに描いたコミックエッセイ『モラクズ男との共依存恋愛から抜け出せた話』(笹川めめみ/KADOKAWA)は、モラハラ彼氏との恋愛の甘さと苦しさ、そしてそこから抜け出すまでの過程を赤裸々に描いた作品だ。
主人公・アイコは、同じアルバイト先で働く先輩・レンタローと付き合うことになる。人生で初めてできた彼氏に舞い上がるアイコは「彼に嫌われたくない」という思いから、彼の好みに合わせて髪型を変えたり、自分の時間を犠牲にしたりして尽くすようになる。恋愛に夢中になるあまり、気づけば彼の言葉や態度がすべて行動基準になってしまうのだった。
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しかし、レンタローは決して理想の恋人ではなかった。アイコの献身に甘え、横柄な態度を取ったり、彼女の前で別の女性を褒めたりといったモラハラを繰り返す。それでもアイコは「私にはこの人しかいない」と思い込み、関係を断ち切ることができない。こうしてふたりは、互いが執着し合う「共依存恋愛」の関係へと落ちていく。
そして、本作はいわゆるダメ男からの被害だけを描いていない。恋愛が人生の中心になってしまうと、人は驚くほど簡単に自分の価値観や生活を差し出してしまうこと、そして恋愛に対する人の心の脆さを、現実のエピソードを積み重ねながら浮き彫りにし、アイコが問題だらけのレンタローから離れられなくなる思考の危うさを示唆するのだ。
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最後に、本作のもう一つのテーマは「気づき」だ。恋愛に依存しているとき、人はなかなか自分の置かれた状況を客観視しづらい。しかし、ふとした出来事や周りの言葉をきっかけに関係の歪みに気づく瞬間が訪れる。アイコがレンタローとの関係を見つめ直し、自分の人生を取り戻していく過程は、同じような恋愛に悩む人にとって大きなヒントになるだろう。
恋愛とは本来、自分と相手を幸せにするものである。しかし往々にして人はその恋に縛られ自分を見失ってしまうことがある。本作はその危うさを教えてくれるのだ。
文=宇田 勉
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