
『甘い沼は地獄の味がする 妻バレでも別れてくれない不倫カレシ』(ミカン:原作、ゆいじ:作画/KADOKAWA)は、ダメだとわかっているのにやめられない恋にハマってしまう女性の心理を描いた物語だ。タイトルの通り、本作のテーマは甘い裏切りの後に訪れる、地獄のような関係である。
主人公は美容師・ミカン。2年ほど付き合っていた彼氏と別れたばかりの彼女は、恋愛相談に乗ってくれていた女性常連客の夫・タケオと急接近する。ある日、妻が帰省しているというタケオの家に招かれ、ふたりはそのまま一線を越えてしまう。最初は「一度きり」のつもりだったはずの関係。しかし、罪悪感を抱えながらも彼とのひとときが頭から離れなくなり、気づけば何度も会うようになってしまう。こうしてミカンは抜け出せない沼へとハマっていく。
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本作は「不倫をしてしまう側」の心理を丁寧に追っているところが秀逸だ。ミカンは最初から悪意を持って関係を始めたわけではない。寂しさや承認欲求、そして「妻とはもう関係が冷めている」というタケオを信じてしまう弱さが、彼女を徐々に深みへと引きずり込んでいくのだ。そして、甘い時間は長くは続かない。とある出来事をきっかけにタケオの言葉が嘘だったことを知り、楽しいデートや密会の裏にあったのは、いつ崩れてもおかしくない関係であったことと、自分の立場の危うさに気づく。一瞬の寂しさを埋めるだけでよかったはずが、もう後戻りできない状況になっていたというミカンの心の動きに、読者は感情移入していくはずだ。
人はなぜ不倫という非生産的な行為、危険な関係に惹かれてしまうのだろう。自分は大丈夫と思っていても、些細なきっかけで心の揺れが生まれ、当事者となってしまう可能性があることを自覚しておくことが大切だ。今まさに道ならぬ恋へと進み始めている人は、本作でその進んだ先にあるものをイメージしてほしい。
文=七井レコア
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