
結婚しても子どもを作らない、という選択はもちろんその夫婦の自由である。しかしもし、身近な人がそう言っているのを聞いたら眉をひそめる人もいるだろう。『DINKsのトツキトオカ 「産まない女」はダメですか?』(北実知あつき/ぶんか社)は、子どもを作らないと決めた妻と、夫や社会との価値観のズレを描いた物語だ。
主人公・金沢アサは、結婚後も仕事を続け、夫・哲也と共働きで子どもを意識的に持たない、いわゆるDINKs夫婦だ。結婚3年目を迎えても、その選択は変わらなかった。だが高校の同窓会で、子どもを持つ同級生たちの会話や、子どものいない自分への陰口を耳にし、彼女は深く傷ついてしまう。帰宅後、夫の「子どもはいなくていい」という言葉に救われるが、その言葉とは裏腹に、彼は誰にも言えない本音を胸に秘めていた――。
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しかし同窓会で感じた居心地の悪さは職場でも同じだった。「1歳でも若いうちだよ?」「早めに産んどきな」といった「子ども産めハラスメント」になる言葉は、もちろん善意からくるものや冗談半分とわかっていながらもアサの心に深く刺さり、「母になること」を前提に組み立てられているような社会の空気に苦しめられる。
そして本作は産まない選択をした妻だけではなく、その隣に立つ夫の心情も描く。表向きには妻の意見を尊重しながらも、彼がひそかに避妊具に穴をあける描写は衝撃的だ。そこに妻を陥れるといった悪意はないにしても、パートナーに対する大きな裏切り行為であることに変わりはない。果たして夫婦はその後にどんな道をたどるのか、ぜひ読んで確かめてほしい。
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「産まない女はダメですか?」という問いかけは、産まない選択に対して世間から受ける反応の苦しさを言い表し、物語もそれをストレートに伝えている。読む人の立場や経験によってさまざまな考え方があるため明確な答えを出すことはできないテーマだが、読後のあなたはどんなことを思っているだろうか。
文=ゆくり
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