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明治を生きた男装の女医高橋瑞物語 田中ひかる/中央公論新社


長年「ジェンダーギャップ指数」(男女格差の現状を各国の統計から評価した数値)の低さが指摘され続けてきたこの国で、このほど女性首相が誕生した。特に政治分野のスコアの後退が近年指摘されていたのに、まさかの政界トップに女性がのぼりつめたのだ。これは間違いなく大事件で、少なくとも高市早苗首相は政界における「女性進出のパイオニア」といえるだろう。先人女性の生き方は後輩女性のロールモデルとなるものだが、ことパイオニアとなればその影響力は絶大。おそらくこの先、彼女に憧れて政治をめざす女性も増えるに違いない。


今は当たり前に女性が進出している領域でも、このように最初はその道を切り開いたパイオニアがいる。昨年の朝ドラ『虎に翼』で法曹界のパイオニア女性が登場したのは記憶に新しいが、たとえば「医学」の分野にはどんな女性たちがいたのかご存じだろうか。このほど文庫化される『明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語』(田中ひかる/中央公論新社)は、明治23年(1890)にドイツへ初の私費留学を敢行した女医の高橋瑞を中心に、医学界のパイオニア女性たちを描く1冊。「医術が穢れる」との社会的偏見にも屈せず、時代を切り拓いた彼女たちの生き方は力強く、勇気がわいてくる。


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