
幼少期に一度は手に取ったことがある人も多いであろう、世界的名作『赤毛のアン』。漫画『アン・シャーリー』(モンゴメリ著・村岡花子訳「赤毛のアン」シリーズ(新潮文庫刊):原作、星窪朱子:漫画、アニメーションシリーズ『アン・シャーリー』:構成/KADOKAWA)は、そんな赤毛のアンを主人公に描く青春漫画だ。美しい大自然の中で紡がれる物語に、懐かしさと共に胸がときめくはず。
カナダの美しい小島、プリンス・エドワード島のアヴォンリーで老兄妹マリラとマシュウに引き取られたのは、孤児のアン。やせっぽちで、そばかすだらけ。けれど、世界中の読者に愛される明るくおしゃべりな赤毛の少女だ。そんな彼女が島で暮らしながら、徐々に人との関わり方を学んだり、恋をしたりしながら成長していく様子が描かれる。
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アンの魅力は、まっすぐ豊かな感性にある。彼女は桜の木を「雪の女王」と呼び、池を「輝く湖水」と名づける。名づけることで世界は輪郭を持ち、彼女の目を通せば、何気ない日常も物語に変わるのだ。また物語冒頭で孤児院に戻すと告げられ、存分に悲しんだ次の朝には「朝って素晴らしい」「最後の時間を楽しむ」と切り替える。大人でも難しい状況を乗り越える心のしなやかさが、アンには自然に宿っている。孤児として過酷な境遇にあったからこそ、彼女は世界をまっすぐ見つめ、悲しみの奥からも光を見出す術を身につけたのだろう。
周囲の人々は、そんなアンに少しずつ心をほどかれていく。厳しいマリラも、不器用なマシュウも、そして島の人々も。アンが持つ純粋さは、固い心を和らげ、日常に優しい変化を運んでくる。その力は読者にも届く。世界を存分に見つめるアンに触れると、忙しない日々の中でもスマホから顔を上げ、世界をもっと知りたいと思えてくる。
幼い日に読んだ懐かしの名作、赤毛のアン。美しい画と共に、ぜひ漫画でその魅力を味わい、あの頃に立ち戻ってみてほしい。
文=ネゴト / fumi
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