
今年2025年は人口のボリュームゾーンである団塊世代が全員後期高齢者入りする年。彼らの介護の担い手となるのは、現在40〜50代の団塊ジュニア世代だ。働き盛りの現役世代だけに、実際にケアが必要になっていないと「まだまだうちは大丈夫」とあまり意識しないもの。だが、こと介護については、事前にきちんと「知識」を持っているかいないかが大きな分かれ目となることも。「いざ、そのとき」になって対応したのでは遅いことも多々あるからだ。
その筆頭例は「介護施設」をめぐる問題かもしれない。「施設はちょっと…」と抵抗感を持たれがちだが、いざ介護の際は上手に施設を利用するのは大切なこと。入院を機にそのまま施設というケースも多々あり、事前に「施設選び」をしっかりしておくと安心なのだ。『マンガで解決 老人ホームは親不孝?』(上大岡トメ:著、畠中雅子:監修/主婦の友社)は、そんな施設をめぐる基礎知識をマンガでわかりやすく伝えてくれるありがたい1冊だ。
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著者はイラストレーターの上大岡トメさん。本書は親の介護問題を取り上げて人気の「マンガで解決」シリーズの第3弾であり、トメさんの親が施設に入るまでの実体験マンガを導入にしつつ、高齢者施設への見学が300回を超える高齢者施設に関するエキスパートである、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子先生が以下のような基礎知識をたっぷり教えてくれる。

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施設に入れるのは親不孝なのか?
自宅での介護が当たり前だと思っている人は多いが、急に自分が体調を崩したり、親が入院したりして、急に施設を検討しなければならないことは多々ある。慌てて探すと「高い」か「人気がない」かの施設しか見つからないこともあるので、在宅にこだわる人でも事前に「オプション」として施設の選択肢を用意しておいたほうが精神衛生上もベターだろう。在宅介護にしろ施設入居にしろ、大事なのは親にとって「快適な住まい」を探してあげること。それができることが親孝行ではないのだろうか?

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「シニアの住み替えは2回」と考えよう
介護や支援の必要がない状態を介護の世界では「自立」という。その状態で安心して暮らせる施設を考えているなら、見守りと生活相談がついている「サービス付き高齢者向け住宅」などに一度住み替えるといい。介護度が上がったら介護型ケアハウスや介護付き有料老人ホームなどその後の選択肢はいろいろある。最初の住宅に入った時点で荷物は整理しているので、施設に入るときの負担感も減るだろう。

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施設に入る予算は年金+預貯金で計算!
まずホームの資金は「親の資金」でまかなうことが大原則。施設探しには親の資産状況と年金額を確認して、無理ない範囲でまかなえることを確認しよう。実際、施設で元気になって想定より長生きする人は多いし、月額利用料は確実に値上がりするもの。予算オーバーな施設は「身の丈に合わない施設なのだ」と割り切ることも大切だ。

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ほかにも施設の種類や選び方、入居のタイミングなど気になるポイントが盛りだくさん。さらに先生を案内役に、都内介護施設のリアルな見学レポートもある。見学に同行したエッセイストの岸本葉子さんは「自分自身が将来入居する想定」で物件をチェックするが、「親のため」にする施設選びは、実は「自分は老後、どう過ごしたいか」をシミュレートするよき機会にもなるのがわかる。親だけでなく自分のためにも、後回しにせず早めに知っておいても損はない。

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そのほか豊富に紹介されている介護体験談も勉強になる。現在施設探しをしている方の参考になるのはもちろん、まだ先という方も、まずは本書を手にとって心の準備を始めてみてはいかがだろうか。
文=荒井理恵
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