
外見はその人を形づくる要素のほんの一部にすぎない。しかし、人を外見で判断したり、容姿から差別したりする行為である“ルッキズム”。問題視する声が世界的に広がっているが、いまだにルッキズムがなくならないのが現実だ。多様な個性や能力が正当に評価される社会を実現するためには、個人がルッキズムに気づき、それに抗う姿勢を持つことが大切なのだろう。
『グランプリは私ですけど何か?~自己肯定モンスターのミスコン無双~』(桃枝司:作画、egumi:原作/小学館)では、そんなルッキズムをテーマに、「ミスキャンパス・コンテスト」通称、ミスコンに参加する女子大学生たちのせめぎあいが描かれる。
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本作の舞台は、大学祭の目玉イベントであるミスコン。女子アナ志望、とにかく有名になりたい、ミスコンの在り方を変えたい――、そんなさまざまな野望を抱えた女子大学生たちが、自分の夢を叶えるためにステージに立つ。さらに、その華やかな舞台の裏には、彼女たちの想いを利用しようとする大人たちのあらゆる思惑が渦巻いていた。
そんな中で圧倒的な存在感を放っているのが、飛びぬけた“自己肯定感”を武器にする謎の女子・めめ。他人からの容姿の評価に一切左右されず、自分の価値は自分で決める彼女の登場に、運営も参加者も大混乱! 前代未聞のミスコンの行方ははたして――?
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本作の見どころは、あらゆる固定観念にも、四方八方から無遠慮に注がれる周囲の視線にも全く心を乱さずわが道を堂々と行く主人公・めめの在り方だ。外見至上主義が色濃く残るミスコンの舞台において、ルッキズムやステレオタイプに一切惑わされずに自分を貫く彼女が周囲を圧倒する姿はまさに圧巻。
本当の美しさとは、他人の目にどう映るかではなく、その人が自分をどう信じ、どう生きるかという信念に宿るのではないだろうか。人目を気にして本当の自分を押し殺してしまう人にこそ、ぜひ手に取ってほしい作品である。
文=ネゴト / 糸野旬
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