ダ・ヴィンチWeb

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年8月号からの転載です。



木漏れ日の差し込む深閑とした杉木立の道、水路が巡る城下の町、急な坂の続く宿場町……。物語のなかで主人公が辿っていく津々浦々は砂原さん自身も歩いた道。


「その土地の匂いや風、音など、五感で捉えたものが執筆の際、風景描写の厚みとなって表れてくると思います。ストーリーにさりげなく挟む、そうした描写から、よりリアルに作品世界を感じていただけたら」


「神山藩」シリーズをはじめ、砂原浩太朗作品の真骨頂のひとつである端正な文章からは、その風景の前に立つ若者、三好孫七郎の息遣いまで聞こえてくる。豊臣秀次の遺児である彼は「大坂の陣」前夜、大坂方の密使として全国に散らばる牢人たちを味方にする役目を受け、旅をしていく。


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