
誰かと一緒にいるのは楽しいけれど、ひとりの時間も大切。そんな少し相反する感情に身に覚えのある人に手に取ってほしいのが、『ソリチュード ひとりを愛する人が集まるバー』(中村あいさつ/KADOKAWA)。「ひとり」を大切にする人たちが集うバーを舞台に描かれる優しい物語だ。
Barソリチュードを訪れる客たちは、年齢も性別も仕事もバラバラ。それぞれ異なる背景や悩みを抱えながらも、「ひとりでいること」に価値を見出している点が共通する。例えば、ギャル風の見た目から誤解を受けやすい「心」。本当は恋人がいなくても仕事や趣味を楽しんでいるのに、派手な外見ゆえに無理をしていると決めつけられてしまう。彼女の葛藤や居心地の悪さに共鳴する読者も多いのではないだろうか。
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他にも、モテるがゆえに人間関係に悩む男性や、口下手で思いを伝えるのが苦手な女性など、それぞれの視点から丁寧に物語が紡がれていく。
読者の中には、ひとりの楽しさに共感できない方やソロ活に憧れるが勇気が出ない方もきっといるだろう。そんな方はぜひ、「風実香」に注目してほしい。彼女は常に恋人がいる生活を送り、相手に依存しがちだった。だが29歳で失恋したことで、初めて「ひとりと向き合う」ことを考え、Barソリチュードの扉を開く。
「ひとりが好き」という感覚が理解できなかった彼女が、バーの空気やマスターの生き方に触れながら、少しずつ自分の気持ちと向き合い、変化していく様子には読者の心も掴まれるはずだ。
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「おひとりさま」や「ソロ活」といった言葉をよく見かけるようになった今、こうしたテーマがより身近に感じられる人も多いだろう。誰かと過ごすことで得られる安心感がある一方で、自分自身と向き合う時間からしか生まれない気づきや癒やしもある。いつも周りに気を遣ってしまう人ほど、本作に触れることで「ひとりを楽しむ」という感覚を見直せるのではないか。
時に孤独は切ないものだが、このバーでの静かなひとときが読む人の心をそっと癒やし、明日を生きる力をくれるはずだ。
文=ネゴト / fumi
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