「俺の気持ちが伝わった」ストーカーの認知のゆがみに恐怖する被害者。復讐のための歪な関係がはじまる【書評】

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『ある夜、ストーカーを脅迫して彼氏にしました。』(喜乃さくら:作画、秋山ヨウ:原作/KADOKAWA)は、ストーカー行為の加害者と被害者が恋人関係になる、どこか歪なラブストーリーだ。
花園まゆり、26歳。大手企業で働き、キャリアも容姿も完璧に見える彼女は、長年にわたり執拗なストーカーに悩まされていた。
そのストーカーの正体が高校時代の同級生、黒木亮だと発覚。夜道に怯えなければならなかった日々は、すべてこの男のせいなのだ。しかし怒りに震えるまゆりが起こした次なる行動は、思いもよらないものだった。
「私のこと好きなの?」
「なら私たち、付き合っちゃおっか…?」
亮が自分へ抱く好意を利用し、逆に傷つけてやろうと試みるまゆり。こうして、思惑が交錯する“歪な恋人関係”がはじまった。
ふたりの関係はストーカーの加害者と被害者である。本作はその過去を純愛ラブストーリーとして安易にラッピングしない。無遠慮に好意を向けられる恐怖やそれらをぶつける側の傲慢さも描かれる。亮とまゆり、ひとつの出来事に対するお互いの解像度のギャップは、それらをよく表している。
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