安部若菜 エッセイ連載「私の居場所は文字の中」/最終回「責任だけが増えるけど」
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足が早くなりたい。
頭が良くなりたい。
皆に好かれたい。
あそこに遊びに行きたい。
お金を稼ぎたい。
世の中に認められたい。
小さい頃から、こんなあれしたいこれしたいはあるのに、それを達成するための”やりたいこと”は全然生まれない。
思い返せば、もっと小さい頃の方がやりたいことがたくさんあって楽しかった気がする。
例えば小学3年生の時。学校でピアノが流行ったとき、私も習いたい!と何度もお願いしてピアノの先生をつけてもらった。
何を教わっていたかは全く記憶にないが、楽譜を見ながら色んなことを書き込んで、色んなメモでびっしりになった ”ピアノを習ってるっぽい” 楽譜が嬉しかった記憶がある。
ただピアノを始めた最初は楽しくて仕方なかったものの、だんだん練習が面倒くさくなっていった。
隔週だったか、月1だったかでピアノの先生が家に来てくれたが、その期間ロクに練習していなかった私は当然何の成長も見せられない。
そんな私を見て隣でため息を吐く先生が怖くて、だんだんピアノの時間が苦痛になっていった。
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