
2023/11/20
胃に2つ穴があいた筒井康隆が「死」について考えた本。用語辞書が必要なくらい難解な「ハイデガーの哲学」をわかりやすく解説
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『誰にもわかるハイデガー:文学部唯野教授・最終講義』(筒井康隆/河出書房新社) 『時をかける少女』『七瀬ふたたび』『日本以外全部沈没』……。数々の傑作で知られる文学界の巨匠・筒井康隆が大きく影響を受けた哲学書をご存じだろうか。それは、ハイデガーの『存在と時間』。近年の筒井作品は「ハイデガー的」であると言われ、「わが最後の作品集となるだろう」との宣言のもとで上梓され、今、大きな話題を呼んでいる掌編小説集『カーテンコール』(新潮社)でもその影響が垣間見られる。“最後の作品集”の刊行で、筒井作品に注目が集まる今は、その哲学を学ぶのにいい機会なのかもしれない。だが、その内容に興味があれど、「難しそうでとても手が出ない」と感じている人も少なくはないだろう。
しかし、「小難しそう」だなんて心配はいらない。なぜなら、ハイデガーにハマり込んだ筒井康隆は、その哲学を分かりやすく説き明かした解説書を執筆しているからだ。その名も、『誰にもわかるハイデガー:文学部唯野教授・最終講義』(河出書房新社)。ページをめくれば、「こんなにも分かりやすい哲学の解説書があるのか」と驚かされるに違いない。この本は「哲学は難解」というイメージを、いとも簡単に覆してくれる。ハイデガーの哲学を初めて学ぶ者にとって、最も手にとりやすい1冊と言っても過言ではないだろう。
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